リノベして誕生した芸術センターは元〇〇です!

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
今週は雨降りが続き梅雨らしい空模様でしたが、来週はまた暑くなる予報ですね。体調管理に気を付けたいものです。

さて、本日は前回に続いてリノベーションした建物のご紹介を。京都市内にある『京都芸術センター』です。地下鉄の四条駅から少し奥に入ったところに登場します。

元の姿をほぼそのまま残す形で再整備されたそうですが、最初の用途が何だったか分かりますか?門の正面から見ると、答えが書かれています。

写真の左側の門柱に『京都市立明倫小学校』の文字が!そうです、ここは元小学校の建物をリノベーションした建物となります。明治2年に開校した小学校をのちに改称し、地元の方の寄付による昭和6年の大改装を経て、現在の校舎が竣工したそうです。一見すると小学校とは思えないモダンな風貌ですが、窓の感じなど、どことなく懐かしさを感じるような哀愁が漂っているなと感じました。

こちらは小学校時代の正面玄関です。時代的な背景や、土地柄(当時から近隣に絵師や学者の方が暮らすなど、文化・芸術に理解があったそうです。)の関係があるかと思いますが、それにしてもおしゃれな校舎…うらやましいです。ところどころにアール・デコの装飾が見られるのも一つの特徴ですね。
ちなみに、アール・デコのデザインの特徴を簡単にまとめると、装飾性が低く、直線や幾何学的なパターンを使ったシンプルなもの、といったところでしょうか。よくアール・ヌーボーと比較されたりしますので、混在しないように注意が必要です。こちらの話はまたいずれ出てくるかと思います(笑)

ちょうどオープン展示がされていて、建物内外のいろいろなところに作品が飾られていました。オープンと言えどアーティストさんの作品なので、ここに載せるのは控えようと思いますのであしからず。

中庭に出るとグラウンドと思われる空間が!街中の立地のため、グラウンドはコンパクトな印象ですね。白線の感じなど、なんだか懐かしくてほっこりしました。整然と並ぶ窓はまさに小学校の教室っぽいですが、やはり時代なのか自分が通っていた学び舎とは全然違うなと思いました。昼休みになると子供たちが走って集まって来たのかな、賑やかな声が響いていただろうな、なんて想像すると微笑ましいです。

別の角度から見るとこんな感じです。

懐かしい時計が目に入ったので思わず写してしまいました。屋根はスペイン風の瓦ですね。オレンジ色の瓦と、クリーム色の外壁がよくマッチしています。
校舎はグラウンドを囲むように建っています。立地を生かした敷地計画も絶妙だなと思いますが、防犯的にも有効だったのではないでしょうか。当時の教室や職員室は、ギャラリーや制作室などに利用されているそうです。伺ったのはお昼前でしたので、比較的静かな感じでした。

中も少し見させて頂きました。

竣工時から残っているスロープです。手摺は木製で作られていますが、子供たちが手で触れることを意識してデザインされたのが伝わりますね。階段よりもスペースをとるため、計画が難しかったのでは、と設計目線で少し考えてしまいました。

『京都芸術センター』内には喫茶室も入っています。

京都のさまざまな施設に出店する『前田珈琲』さんの支店第一号となります。
2020年に支店の20周年を記念して、京都出身の現代美術家と建築家を中心としたメンバーが集まったプロジェクトにより空間が新しくなったそうです。教室の雰囲気が色濃く残っていた当初の姿も見てみたかったなと思いましたが、今の雰囲気も作品の中にいるようで面白かったです。
見切れていますが、写真の右側にある飾り棚はロフト用の階段が使われているようでした。住宅では取り入れることがあまりない店舗特有の使い方かもしれませんが、こういうディスプレイの仕方も面白いなと勉強になりました。全貌が見たい方はお声掛けくださいませ。(人が写っているので、ブログへのアップは控えようと思います。)

この壁の裏がキッチンです。ニッチ的な小窓が可愛らしいですね。そこから料理が提供されますので、利便性も備えたデザインとなっております。
本日も長くなってしまいましたのでこの辺で。次回もお付き合い頂けますと幸いです。

古民家カフェで引出しを増やす!

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
梅雨に入り、じめっとした日が続いていますね。湿度が高くなりますので、雨の晴れ間も油断大敵。熱中症にもご注意くださいませ。

さて、本日は久しぶりに、カフェのご紹介をしたいと思います。個人的な話ですが、最近、私の中で関市が熱いです。本日ご紹介させて頂くお店も関市です。時間に少し余裕ができると、古民家や内装にこだわったカフェを訪ねるのがささやかな楽しみでして、かねてから行きたいなぁと思っていたお店に先日お邪魔できました。

外観から痺れますね(笑)風情のある素敵な趣です。アプローチの石畳も良い感じですよね。生憎の雨でしたが、庭木に滴る水滴が良い雰囲気を出していて、これもまた有り、という気分でした。また晴れた日にも行きたいですけどね。

入口には胡蝶蘭が飾ってありました。昨年オープンしたそうで、もうすぐ1年を迎えられる頃でしょうか。

照明器具の使い方がオシャレです。住宅の場合で考えると少し贅沢な使い方かもしれませんが、必要なところに必要な器具を設えるのはメリハリがあって良いですよね。参考にしたいなと思って思わず写真を撮ってしまいました。

中の雰囲気も素敵です!痺れますね(笑)雨にも関わらず、入ったときはほぼ満席でした。そのおかげか帰りは最後になりましたので、人がいないところを撮らせて頂くことができました。

内装の雰囲気と家具の相性もピッタリですね!キッチン(厨房)前にある収納スペースも良く工夫されているなと思いました。勉強になります。
梁の雰囲気もとっても素敵で、思わず見惚れてしまいました。マニアックな視点で恐縮ですが、奥に見える丸太梁も最高ですね。

何を撮っているんだと言われそうですが…表に見える梁と奥に覗く梁に何とも言えない味を感じまして。先人がしっかりと建てて残してくれた建物を、きちんと生かして新しい形にするリノベーション、難しいこともたくさんありますが、それ以上にやりがいも楽しさもあります。今回ご紹介した建物は弊社の工事ではありませんが、躯体がしっかりしている古民家は、やはり大切に次の未来へ残していきたいなと改めて思いました。

お店の中から外を眺めた雰囲気も落ち着いていて好きです。お庭もよく手入れされていて、外観とマッチしていました。夏を迎えたときの苔の雰囲気がまた楽しみだなと思いつつ、“あのお客様の家に合いそうだな~”なんて思いを巡らせながら眺めていました。

最後にもう1枚。
カフェですので、お料理の写真もご紹介しなきゃですよね。メインはご来店いただくときの楽しみに残しておいて…デザートを。

お料理もとっても美味しかったですが、食後のコーヒーが本当に美味しくて。焙煎具合が私の好きな味でした。デザートの甘さのバランスも絶妙で、またリピートしたいなと思います。
詳しい場所が気になります方はお声掛けくださいませ。住宅地の中にありますので、近隣の方のご迷惑にならないようお気遣い頂ければと。それでは、次回もお付き合い頂けますと幸いです。

コルビュジエ建築に日本で出会うには…

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
早いものでもう6月ですね。しかし屋外での作業は既に暑さ対策が必要になってきております。湿度も高くなりますので、油断せず水分補給に気を付けましょう。

さて、本日もル・コルビュジエさんの建築についてご紹介を。ご存じの方も多いと思いますが、日本でも出会うことができます。東京・上野ですね。

国立西洋美術館です。写真がないかな~と探しておりましたら…2012年のものがありました。かなり前ですね(笑)休日の印象かもしれませんが、この辺りは人で賑わっているイメージがあるので、このタイミングで写せたのは私的には奇跡と思っています。
ちなみに、基本設計の素案はもっと大胆なものだったそうで、音楽・演劇ホールと企画展示パビリオンが加えられていたそうです。この建物が建設された時代背景を考えると、日本にそんな余裕はなかったと分かりますが、この建物の向かいには弟子である前川國男さんの東京文化会館が建っています。 音楽ホールも備えています。なんだか感慨深いですが…この話はまたいつか機会があれば。

コルビュジエと言えば建築をかじったことのある方ですと、“近代建築の5原則”の他に“モデュロール”というキーワードが浮かぶのではないでしょうか?モデュロールとはコルビュジエが考案した、人体の寸法と黄金比によって定めた数列です。人が自然に心地よく感じられる寸法体系を追及して導かれています。ただこれは、ヨーロッパ人男性の理想的身長を基にしているため、学生時代の私は、万国共通で考えるには無理があるだろう、と正直思ってしまいました。(批判しているわけではありませんよ。)
話がそれましたが、このモデュロールは外壁のコンクリートパネルにも使われてデザインされています。 写真に写っていないですが、床もモデュロールによってデザインされています。近影の写真がなくてごめんなさい。

中の写真は当時NGだったのか、手元にほとんど残っていないのですよね…。なので是非、機会がありましたら訪れてみてくださいませ。コルビュジエによって『19世紀ホール』と名付けられた空間を構成するトップライトとスロープがお勧めです。あと、雨樋も探してみてくださいね。普通は建物の外側に付けられていますが、見当たらないですよね?

折角なのでもう1枚。2009年頃かな…初めて訪れたときのものです。
こちらの階段とテラスはコルビュジエの図面では出口とされていたそうですよ。ですが、開館以来一度も 使われていないと聞きました。と言っても聞いてから年月が流れているので、今も継続しているのかはお調べできておりません。

余談ですが、彼の残した業績などはル・コルビュジエ財団によって保管・管理されています。この財団の事務所は前回ご紹介した建物内に入っていますが、私の愛用している筆箱もそちらの方に訪れた際に購入したものです。もう何年経つやら…という感じで使い続けていますが、なかなかにボロボロでして。ですが手放せないのですよね…(笑)打合せで目にされた方はお気づきでしょうが、ズボラなわけではないので、温かい目で見て頂けると嬉しいです。

本日はいつもより短めですが、この辺で。次回もお付き合い頂けますと幸いです。

パリに佇む白い建物

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
新入社員の2人が現場での研修を終え、事務所で日々奮闘しております。現場でもそうですが、初めてのことが多く覚えることばかりの毎日だろうな…と、私も先輩としてしっかりサポートできるよう、気持ちを新たにする今日この頃です。

さて、ブログの方はマイペースに…本日もル・コルビュジエさんの建物をご紹介させて頂ければと思います。

ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸です。
前回ご紹介したサヴォワ邸より少し前に完成した建物で、ここでも『近代建築の5原則』を堪能することができます。サヴォワ邸はパリの郊外ですが、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸はパリの中心部に近いところにありますので、見学にも訪れやすいと思います。
2棟続きの建物で、コルビュジエの兄夫妻の邸宅と、銀行家でコレクターのラ・ロッシュ氏の自宅兼ギャラリーとして建てられました。
外観からも分かる特徴的な水平連続窓、中から見ると、また雰囲気が変わります。

こちらはラ・ロッシュ氏のコレクションを展示するためのギャラリー(アトリエ)です。この湾曲した壁面に沿わせたスロープが何とも言えない空間を作り上げています。
余談ですが、10年近く使っていた先代の私の携帯は、このギャラリーを待ち受け画面にしていました。

中央のテーブルもコルビュジエらのデザインで、作り付けになっています。スロープを上がっていくと吹抜けへと繋がっていきます。見切れていますが、奥にあるカウチやスロープ下の収納ケースなどもコルビュジエやシャルロット・ぺリアンらによってデザインされたものだそうです。私事ですが、細部の写真が撮れていないのが後悔です。当時、見学する前にもっと予習しておけば良かった…と反省したのを思い出します。
話が逸れました。図面を見ると移動空間が多いなという印象ですが、行き止まりになりそうな箇所に開口部があり、建物の中を散歩しているような感覚を持ちました。コルビュジエ自身も『建築の散歩道(プロムナード)』と称していたそうで、なるほど、と思いましたね。住宅設計の要素として必要かどうか、という議論もあるかもしれませんし、贅沢な印象を受けるかもしれませんが、少なくともこの建物を体感したとき、私はこの建物が今のデザインになった事に感動しました。

そしてやっぱり目を惹くのは空間構成の巧みさです。

幾何学的に構成された平面が立体として自由に組み合わさっているような印象を受けます。画家でもあったコルビュジエさんですので、空間の組み立て方が違うのかな~と想像してしまいます。写真では大きい印象を受けますが、比較的コンパクトにまとめられていて、それでいて変化にとんでいる面白い建物です。ただ、この図面(特に展開図)を描け、と言われたら途中で少し嫌になるかもしれません(笑)

中の写真をもう1枚。

暖色と寒色を組み合わせた色使いはさすがですね。対比に近い関係にある2色ですが、床の色味に合わせた落ち着いたトーンで、見事にまとめています。西洋人と東洋人では目の色素が違うため、色の見え方も変わると聞いたことがあります。絵画などの歴史を見ると頷けますよね。雪舟に代表するような色彩もとても好きですが、こういった色の使い方を見ると少なからず憧れに似た感情を抱きます。色の使い方が上手いな~と。AIの発展でそういった隔たりは薄れていくのかもしれませんけどね。どちらが上ではなく、どちらも自分の手で表現できるようになりたいなと思います。

最後にもう1枚外観を。
市街地の中の制限された敷地の中で、この建物を表現したことに驚きました。建った当初は周りの建物からも浮いていただろうなと思いますが、今では街並みの中に納まっていることがまた不思議です。今回もマニアックな話が多くなりましたが…次回もお付き合い頂けますと幸いです。

続・モダニズム建築~サヴォワ邸の中は…?~

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
みなさま、GWはいかがお過ごしでしたか?リフレッシュして仕事開始、という方もみえると思いますが、春の嵐が列島縦断、急な天候の変化にお気をつけくださいませ。

さて本日は、前回に続き、サヴォワ邸のご紹介をさせて頂こうと思います。(覚えてみえますか?)20世紀を代表する巨匠、ル・コルビュジエが設計した建物ですね。
今では傑作として広く認められていますが、廃墟のようになっていた時期もあります。歴史を紐解くと想像頂けるかと思いますのでここでは細かく書きませんが、この建物について学ぶと、造形だけでなく家の持つ運命にも驚かされたのを覚えています。

それでは中を少し覗いてみましょう!

ここはリビングにあたる空間です。サヴォワ邸は居住空間の大半が2階にある設計ですが、元々、週末用住宅として設計を依頼された邸宅ですので、贅沢な空間構成なども頷けますね。(原図を見ると、1階には客室と使用人さんのお部屋が備えられています。)
コルビュジエが設計した椅子も置かれていて、当時、生で拝むことができてとても感動しました。(正確にはフランスの建築家・デザイナーのシャルロット・ぺリアンらとの共作ですね。このお話はまた機会があれば。)私はコルビュジエの家具と言われて最初に思い浮かぶのが奥の手前にある寝椅子です。LC4と呼ばれています。ちなみに、手前にあるソファはLC2、奥にあるチェアはLC1だったかと。名称で考えると、一般的にイメージされるのはLC1や2でしょうか?ちょっと聞いてみたいです。
ここの空間では、コルビュジエの提唱した5原則の1つ、水平連続窓を味わうことができます。石造から鉄筋コンクリート造へ、縦長窓や小開口から水平横長の連続窓へ、今につながる技術の進化を感じることができます。

室内から外(テラス)を眺めるのも良いですよ。ゆったりした時間を過ごせるのだろうなと想像が膨らみます。また、リビングとテラスの境にある大開口は引戸になっているため、開けると一体化した空間のように使用できます。晴れた日などは気持ちが良いだろうなと思います。

テラスにはテーブルも備えられていました。外でも人目を気にせず過ごすことができますね。星を見ながら一杯…なんて風流ですね。1階からのスロープがここから屋上へと折り返して繋がっていきます。大胆で自由な空間構成です。

何故だか分かりませんがこの角度の顔が好きだなと思いました。(もちろんリビングなども好きですよ!)幾何学的な造形の組み合わせにそそられるのかもしれません(笑)線が通っていてシンプルそうなのに複雑性のある感じが…刺激を受けます。
スロープの奥には螺旋階段もあります。素早く上下を移動できるよう、スロープとは異なる機能面を補う役割があるようです。一般住宅で螺旋階段を取り入れることは少ないと思いますが、学生時代には一度は設計に入れてみた、という方は意外と多いのではないかなと思います。私も覚えがあるので。

最後にもう1枚ご紹介を。
こちらは浴室になります。巷ではよく知られた写真です。

訪れる機会がありましたら、是非ここに寝そべってみてください!体格差がありますので感じ方に個人差はあると思いますが、波打つ形にフィットする感覚を体感して頂きたいなぁと思います。マニアックな話が多くなりましたが…次回もお付き合い頂けますと幸いです。

モダニズム建築の代表と言えば…?

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
GWで連休中、という方もみえるでしょうか?今年は最大で11連休とのこと。既に渋滞のニュースなど聞かれていますね。どこもかしこも混雑しそうですが、そんな時こそ慌てず焦らず、楽しんでいただけたらと思います。また、ライフラインを支えて頂いている皆様は、GWも関係ないよ、という方も多いかと。いつもありがとうございます。

さて本日は、谷口吉生さんの建築をご紹介していたからかモダニズム建築のお話をしたくなりました。
“モダニズム”と聞いて思い浮かぶ建築家さんや建物はありますか?モダニズムとは近代主義のことで、主に「19世紀後半から20世紀初頭にかけて起こった哲学的・芸術的運動」のことを指します。それにしてもマニアックな質問ですね(笑)ごめんなさい。ちなみに、“モダニズム建築”を簡単に説明するなら、合理主義・機能主義(機能美)の建築、といった感じでしょうか。

私はやっぱり最初に思いつくのはこの建物です。

20世紀を代表する巨匠、ル・コルビュジエが設計したサヴォワ邸です。

モダニズム建築は、過去の歴史様式や伝統的手法に反する形で目指された様式で、発想は20世紀初頭には現れていたそうですが、理論化されたのは1920年代になってからとの事です。近代建築運動がヨーロッパ各地で盛んだったこの時代、当時の建築家たちの熱量を感じるためか、建築の勉強を始めた頃、この時代の建物を見るのはよりワクワクしました。

話を戻します。
サヴォワ邸は、ル・コルビュジエ自身が提唱した『近代建築の5原則』を体現した建物だと言われています。

では、『近代建築の5原則』とは何なのか?それは、『ピロティ、自由な平面、自由な立面、水平連続窓、屋上庭園』の5つです。写真からも分かるように、1階はピロティ(壁がなく柱だけで構成された吹き抜けの空間のこと)となっています。水平連続窓も見ての通りですね。そして、フラットな屋上は庭園として利用されています。ちなみに、これは建物で削り取った緑を補っている意図があると知りました。

写真の時期が悪いですがご容赦ください。
上階の荷重は柱で地面に支えられるため、壁は間仕切り壁として自由に配置できるようになり、平面に自由度が生まれると共に、立面にも自由度が生まれます。木造住宅をメインに地震の国で仕事をしている身ですので、気になるところも多々ありますが…。

こういう曲面や斜路を使いこなすのも稀代の建築家のなせる業ですね。当時ではきっと新しい感覚だったのでは、と思います。
なんだかマニアックな話が長くなってしまいましたので、本日はここまで。次回は中のご紹介ができるかしら。住宅設計の観点からも勉強になるんですよね。次回もお付き合い頂けますと幸いです。

アンティークを基調にしたカフェに行ってきました

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
今年は桜の開花がゆっくりでしたので、入学式に間に合った方も多いのではないでしょうか。私もこの時期は桜を眺めながら出勤しています。(もちろん安全第一で。)
今年は新入社員が加わったこともあり、季節感を強く感じています。出会いの季節、今年はどんな出会いが待っているのか、ワクワクしますね。

さて、本日も前回に続き、カフェのご紹介をしようかなと思います。

人がいない隙を狙ってパシャっと。木曽川湖畔に佇むカフェです。『大人の隠れ家』的な落ち着いた空間です。カウンター席からは素敵なお庭を眺めることができますよ。ここは是非座って味わっていただきたいので載せませんが(笑)ゆったりとした時間が流れているような、居心地の良い空間でした。適度な広さ、ということもあるかと思いますが、目まぐるしく回る現代には大事な癒しの場所に思います。そして、店主の好きが詰まっていることが分かるお店でした。それが素敵な空間を作っているのだと感じます。

使われている照明は可愛らしいガラス製のものがメインです。ブラケット(壁付けの照明)やペンダント(天井から吊り下げられた照明)が中心で、空間に統一感がありますね。こういった照明器具は普及品もあれば一点物の出会いもありますので、こだわりが感じられます。

白の壁に濃い木の色、アンティークで落ち着いた空間は、可愛らしさの中にどこか懐かしさが漂っていますね。こちらの喫茶店はリノベーション工事ということもあり、厨房スペースにはその名残が見られます。梁や構造体をどうするか、きっと悩んだんだろうなと思いながら、もう少し観察したいと思いつつ…ご迷惑になるので今回は止めておきました。

厨房スペースが良く見える席に座りましたので、カップの並べ方などを研究していました。カフェ風なオシャレな空間をつくるときの参考になります。日々の生活に追われる中で、見せる収納はなかなか難易度が高いですが、憧れもありますから。また、組み合わせているアイテムも相性バッチリですよね。空間に統一感を持たせるためには、大小限らずアイテム選びはとても大切だと実感します。
本日は取り留めのない話になってしまいましたが…ご相談いただく皆様のご希望がカタチにできるよう、私も引出しを増やしてお待ちしております!詳しい場所が気になります方はお声掛けくださいませ。次回もお付き合い頂けますと幸いです。

おまけ。
アフタヌーンティーに憧れて(つられて?)行ってみたいなと思っておりました。美味しい紅茶を片手に、時にはゆっくりとした時間を過ごすのも良いものですね。

古民家カフェに行ってきました

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
4月に入り、弊社にも新しいスタッフが増えました!話をしていてもドキドキ緊張しているのが伝わります。自分のときを懐かしく思い出しつつ…早く馴染んでもらえるよう私たちも空気づくりに励みます。事務所や現場で顔を見かけましたらお声掛け頂けると嬉しいです。

さて、本日は少し今までと趣向を変えまして、先日訪ねたカフェをご紹介したいと思います。

たまたま友人とどこかお茶に行こうかと検索していてビビッと来たので、訪ねてみました。お店の方に写真を撮らせてもらえるか確認しましたら、快くお返事いただけました。

こちらは、犬山焼の窯元さんが営むカフェです。天保14(1843)年頃に建てられた建物の一部を改装し、『犬山焼 ( 器 )を愉しむ』ための古民家カフェをオープンされたそうです。
外観に思わず見惚れてしまいますね。文化財としての価値もですが、大切に住み継がれてきたことが分かります。また、耐震診断などで現地調査に伺うこともある身としては、基礎や軒裏の様子も気になります。工事、大変だっただろうなぁと妙に親近感が湧いてしまったり…床下を覗き込みたくなるのをこらえて中に入りました。

広々とした素敵な土間空間ですね!隣接して陶房があるため、窯元が営んでいるカフェ、という雰囲気が見事に表現されています。そして、土壁に化粧の柱・梁(真壁)、良い具合に変化した木材の色味、ほっと落ち着く空間です。土間に座っていると時間を忘れてしまいそう。カウンターまわりは新しくされたんだろうなぁという雰囲気の木材の色味ですが、それが反対にアクセントになって良い味を出しています。

すみません、慌てて撮ったら傾いてしまいました…。今どきのカウンタースペースと、和室の団らんスペース。どちらに座るか迷いますね。土間+カウンター下板貼り、相性抜群でオシャレですよね♪♪見えるところですので、コンセントにもこだわっていることが分かります。

懐かしい雰囲気の階段収納もありました。新築などでも取り入れることがありますが、こうやってみるとやはり味が違いますね。そして奥に見える丸太梁!古民家改修の醍醐味ですよね。テンションが上がってしまいます。しっかり作ってあるので住み継ぐことができる、という事がよく分かりますね。そして、それはカタチにできる職人さんたちがいてこそ。これからも技術の継承がされてほしいなと願わずにはいられません。

カウンター奥の棚も考えられていました。モノの帰る場所がしっかり決まっていて、見せる収納と隠す収納が共存しています。単調にならないようデザインや配置も工夫されているなと感じました。そして、隠していても味のある雰囲気、参考にしたいと思います。

ちなみに、お抹茶や珈琲をいただくときの器は、こちらの並んでいる中から選ばせて頂けます。皆さんならどの器でホッと一息つきたいですか?
詳しい場所が気になります方はお声掛けくださいませ。次回もお付き合い頂けますと幸いです。

モダニズム建築を代表するホテル Part2

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
先週末からまた急に冷え込んだ日が続きましたね。花粉に悩まされつつも、春を待ち遠しく思う今日この頃です。
さて本日は、前回に続いて『The Okura Tokyo』のお話をさせて頂こうと思います。

本館に入ると、すぐに大花生け鉢が来館者を出迎えてくれます。元々あった三波石を移設して再製作されたとの事、季節によって違う表情を見せてくれますので、訪れるのがより楽しみになりますよね。
この大花生け鉢は六角形の形をしています。なので通称「六角」と呼ばれているそうです。ご存じの方も多いと思いますが、正六角形の文様は『亀甲文』と呼ばれ、古くから長寿や吉祥のシンボルとして親しまれています。名前の由来は亀の甲羅に似ているからですね。オークラのブランドを象徴するモチーフとして、亀甲文はいろいろなところで見ることができます。お部屋の小物にもさりげなく使われているのを見たときは、何故だかちょっと嬉しくなりました。ここには載せませんので、訪れる機会がありましたら探してみてくださいませ。

こちらは中2階のスペースです。1階にも平たい天井のスペースがありますが、吹抜とはまた違う趣があり、座っていてほっと落ち着きます。

そして横に見える手摺は、建て替えに伴い現行法に合うようアップグレードされています。まさに親子2代のコラボレーションですね。元のイメージを壊さないようデザインされた新たな手摺は、すんなりと空間に馴染み、懐かしい空気を与えてくれます。
ちなみに、1階にも同じように障子が設けられていますが、時間帯によって外の植栽による陰影を楽しむことができます。最近は障子を使う事が減ってきましたが、是非お勧めしたいアイテムです!便利な電化製品ももちろん大事ですが、暮らしを豊かにするアイテムとしてまた違う味がありますので。

そして建築を学ぶものとして、ホテルに泊まると見てしまうのが細かいところの設え。例えば分かりやすいところでいくと、引出しの引手や扉の手掛けがどのようなデザインになっているか、などです。とりあえず全部開けますね(笑)

ホテルのこだわりがあると思いますので、あまり載せない方が良いかなと思いつつ…1枚だけ。使い方や閉まっているときの見え方を考えて選択されているなという事を感じました。今後の参考にできるよう、ストックはカメラの中にばっちりです!目立たないところですが、だからこそこだわりたいですね。

最後に1枚。

ロビーはもちろん素敵で大好きですが、私は中2階の手摺からもたれて全体を見られるこの場所がお気に入りです。時間を忘れてずっと眺めていられますね。(ロビーは私にはまだまだ敷居が高過ぎて、座っていてもそわそわしてしまいます。)

2回にわたって語らせて頂きましてありがとうございました。そろそろ違う建築家さんにスポットを当てましょうか。次回もお付き合い頂けますと幸いです。

モダニズム建築を代表するホテル Part1

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
いよいよ花粉の足音がしてきましたね。例年より多いという話も聞こえてきます。花粉症の方もそうでない方も、上手に付き合っていきたいものですね。
さて、本日も引き続き谷口吉郎さん・吉生さんの建築について触れたいと思います。

この写真でどこだかピンと来た方、お目が高い!
『The Okura Tokyo』です。2015年に谷口吉郎さんの設計された『ホテルオークラ東京』は惜しまれつつ閉館・解体され、谷口吉生さんの設計により2019年に新しく開業されました。写真は本館ロビーの様子です。再現された意匠で話題となりました。
と言っても再現の度合いが想像できませんよね。残念ながら当時の姿を私は見ることができなかったので、学生時代から愛読している雑誌をお借りしますと…。建物の向きなど変わっているそうですが、中に入ったときの再現度…見事です。当時を思い出して懐かしむお客様もみえるのではないかと想像します。

オークラは日本の伝統的美意識を表現するために和の意匠が随所に用いられています。例えば、表紙にも載っているテーブルと椅子は、梅の花をモチーフにしています。上から見ると、漆仕上のテーブルが梅の芯になり、5つの椅子が花弁のように見えますよ。絨毯は市松模様ですね。
また、ロビーにある天井から吊り下げられた印象的な照明器具は、切子玉形をモチーフにしています。切子玉は古墳時代の装飾玉の一つで、水晶の結晶の上下を切り落として磨き上げたものだそうです。「オークラ・ランターン」と呼ばれて親しまれています。また、ランプは白熱灯からLEDに替え、昼夜の時間帯によって光のトーンを切り替えることで風情のある光を実現しているそうです。考え抜かれたデザインに感服します。

そして、雪見障子が印象的な壁面の上部には、麻の葉紋の美術組子が設えられています。遠目の写真で見にくいかもしれません…すみません。麻の葉を広げたように見える木組みで、単純に見えて非常に繊細で巧みな文様です。こちらの再現をするにあたり、実に2年以上の工期がかけられたそうですよ。閉館後の調査期間で、葉の輪郭より葉脈が3mm低く組まれていたことが分かったそうです。わずかに見える凹凸ですが、これにより立体感を生んでいたことが分かりますね。以前、建て替えにあたり旧家で使われていた建具を再利用できないかご相談頂いたことがあります。とても素敵な木組みの建具で、職人さんの手仕事を間近で感じることができました。貴重な経験をさせて頂けて、お客様には感謝です。ありがとうございました。
話を戻します。文様の向きも柱などの垂直のラインに対して水平のラインが強調されるように、意識的に考えられているそうです。見上げた目線を考慮したことと、外の光を取り込む際の庇のような役割を考えていることが推測されるとのこと。奥が深いですね。ゆったりくつろいで過ごせるロビーでありながら、より精錬された空間として印象付けられます。

そしてロビーの正面には、開業時と同じ西陣の工房が手掛けた四弁花文が再び飾られました。開業から25年ほど経った頃の色合いに合わせた方が、人々の記憶に近いのではないか、との事で、あえてほんの少し黄色がかった糸を選定したそうです。どこを見ても本当に考えつくされていますね。立場は違いますが、家づくりでも色決めの打合せを行う際、私たちも経年美化を考えてご提案したりします。完成時はもちろん大切ですが、長く付き合って頂きたい我が家です。先を見据えてご提案することはなかなか勇気がいるものですが、この姿勢を見習いたいなと思います。

ロビーの話はこの辺で。長くなりそうですので、続きは次回に持ち越したいと思います!次回もお付き合い頂けますと幸いです。