パリに佇む白い建物

こんにちは、デザインチームの瀬尾です。
新入社員の2人が現場での研修を終え、事務所で日々奮闘しております。現場でもそうですが、初めてのことが多く覚えることばかりの毎日だろうな…と、私も先輩としてしっかりサポートできるよう、気持ちを新たにする今日この頃です。

さて、ブログの方はマイペースに…本日もル・コルビュジエさんの建物をご紹介させて頂ければと思います。

ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸です。
前回ご紹介したサヴォワ邸より少し前に完成した建物で、ここでも『近代建築の5原則』を堪能することができます。サヴォワ邸はパリの郊外ですが、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸はパリの中心部に近いところにありますので、見学にも訪れやすいと思います。
2棟続きの建物で、コルビュジエの兄夫妻の邸宅と、銀行家でコレクターのラ・ロッシュ氏の自宅兼ギャラリーとして建てられました。
外観からも分かる特徴的な水平連続窓、中から見ると、また雰囲気が変わります。

こちらはラ・ロッシュ氏のコレクションを展示するためのギャラリー(アトリエ)です。この湾曲した壁面に沿わせたスロープが何とも言えない空間を作り上げています。
余談ですが、10年近く使っていた先代の私の携帯は、このギャラリーを待ち受け画面にしていました。

中央のテーブルもコルビュジエらのデザインで、作り付けになっています。スロープを上がっていくと吹抜けへと繋がっていきます。見切れていますが、奥にあるカウチやスロープ下の収納ケースなどもコルビュジエやシャルロット・ぺリアンらによってデザインされたものだそうです。私事ですが、細部の写真が撮れていないのが後悔です。当時、見学する前にもっと予習しておけば良かった…と反省したのを思い出します。
話が逸れました。図面を見ると移動空間が多いなという印象ですが、行き止まりになりそうな箇所に開口部があり、建物の中を散歩しているような感覚を持ちました。コルビュジエ自身も『建築の散歩道(プロムナード)』と称していたそうで、なるほど、と思いましたね。住宅設計の要素として必要かどうか、という議論もあるかもしれませんし、贅沢な印象を受けるかもしれませんが、少なくともこの建物を体感したとき、私はこの建物が今のデザインになった事に感動しました。

そしてやっぱり目を惹くのは空間構成の巧みさです。

幾何学的に構成された平面が立体として自由に組み合わさっているような印象を受けます。画家でもあったコルビュジエさんですので、空間の組み立て方が違うのかな~と想像してしまいます。写真では大きい印象を受けますが、比較的コンパクトにまとめられていて、それでいて変化にとんでいる面白い建物です。ただ、この図面(特に展開図)を描け、と言われたら途中で少し嫌になるかもしれません(笑)

中の写真をもう1枚。

暖色と寒色を組み合わせた色使いはさすがですね。対比に近い関係にある2色ですが、床の色味に合わせた落ち着いたトーンで、見事にまとめています。西洋人と東洋人では目の色素が違うため、色の見え方も変わると聞いたことがあります。絵画などの歴史を見ると頷けますよね。雪舟に代表するような色彩もとても好きですが、こういった色の使い方を見ると少なからず憧れに似た感情を抱きます。色の使い方が上手いな~と。AIの発展でそういった隔たりは薄れていくのかもしれませんけどね。どちらが上ではなく、どちらも自分の手で表現できるようになりたいなと思います。

最後にもう1枚外観を。
市街地の中の制限された敷地の中で、この建物を表現したことに驚きました。建った当初は周りの建物からも浮いていただろうなと思いますが、今では街並みの中に納まっていることがまた不思議です。今回もマニアックな話が多くなりましたが…次回もお付き合い頂けますと幸いです。